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小嶋亜創×村上隆 トークショーレポート

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Photo IKKI OGATA

小嶋亜創さんと、村上隆のトークショーが開催されました。
はじめに小嶋さんから、これまでの経歴や、現在の生活に至るまでの経緯をお話いただき、村上からは小嶋さんとの出会い等のエピソードで、トークショーがスタートしました。

Photo IKKI OGATA
今日は「鉄の意思を持つ陶芸家」の創造の核心に迫るお話が聞けると良いですね、と村上。

「思い出話から、、、」と言って、農的生活に興味が芽生えた中学生時代、そして、山形での高校生活について、お話頂きました。

Photo IKKI OGATA

小嶋さんは、中学生の頃から、一般的な高校で学ぶ勉強内容に疑問があったと考えていたそうです。

小嶋さんはしばしば<半農・半陶>との生活様式がクローズアップされてきた作家さんです。
陶芸作品を造る。その為に食うものは自給自足。1日24時間をくるくる働き続けて創作活動のエンジンをまわし続けています。その強靭なバイタリティ発生の源泉は既に10代前半で意識の芽生えがあったそうです。

どういった学生生活を送っていたのかというと、、、
『北の国から』の影響もあり、農業に興味があったことから、全寮制の朝晩、農業や酪農に従事する時間がある、山形の高校に進学。きっかけは、「偏差値なんて関係ない」という学校紹介の新聞記事。すぐに両親と見学に行き、入学を決めましたが、蓋を開けてみれば学生達は普通の学校と同じように進学を目指し、学校の方針も「偏差値なんて関係ない」とはかけ離れており、筋の通ってなさに憤激。退学を考え始めたと言います。

ですが、自分が希望して入学した手前、退学を言い出すのも筋が通らないのではないかと、独特の行動に出ます。1年間テストの答案用紙を白紙で出し続けることで、退学に持ち込もうという作戦です。その努力(?)が報われ、めでたく?!退学処分を受け故郷に帰って来たと言います。ですが、ココからが、まさにドラマチック。

<「偏差値なんて関係ない」という売り文句とは裏腹な教育方針に疑問>を実行力で貫徹した小嶋さんの考え方は、同級生や教師、そして学生の父兄にまで及び、大きな波紋を広げ、小嶋さんの退学処分反対運動が起こり、退学取り消しという結果になり、そうなると、なんとも言えない申し訳ない気持ちと、仲間がいたんだという驚きと感動とで高校に戻り、卒業まできちんと就学したといいます。

まさに一筋縄では行かない精神の持ち主。

Photo IKKI OGATA

高校を卒業後は、1年間、ヒッチハイクで日本各地の百姓修行に出かけ、転々と農家に世話になって、そのノウハウを実践で積んでゆきます。百姓とはその字のごとく、百のあれこれを行う生業の事。農業しかり、それにまつわるあらゆるお手伝いしかり。

その旅の最後の地が九州の熊本で、その地に居た陶芸家の生き方に共感。とはいえ、弟子入りするわけでもなく、穴窯用の穴を20日間程掘り続けるだけという作業の合間に、その作陶家の生活を目の端で追い、そういう生活への方向性を考えるきっかけになったと言います。

「北の国から」で思った夢、自然の中で暮らしてゆきたい。高校での筋を通した白紙答案から退学処分、友人達の嘆願書、学校復帰、卒業、ヒッチハイク、百姓修行。そして、結婚、子供の誕生。。。。

そういう合間にも、哲学書を読み、自分の人生の指針を編み込み、生活の為に農業を行い百姓のその名の通りに生活の為になんでもおこない、柳宗悦の「民芸」運動に傾倒し、己の作陶の方向性を上物ではなく、下手物と設定し、作陶が自分に合っているのではないか、と、実験を始めました。師について弟子になる、といったプロセスが苦手だということから、全て独学で習得した小嶋さん。オブジェを造り、窯を造っては壊し、窯を焼き、展覧会を行い、ギャラリーも自前で造る。そういった経緯の果てに今の彼の作品がある。そんな歴史を語ってくれました。

また、今回の1,000点以上の出展作品について、技法がばらばらな理由として、自分のポリシー、新しい事をやり続ける、エンターティンする、であると説明。100個作っても3割しか世の中には出さない、つまり7割は破砕し、良いものだけを展覧会に出展する、というこだわり。そのクオリティで彼が設定した価格で販売する、それはすなわち、柳宗悦の標榜した下手物の中の美というコンセプトに合致するという業界全体への大きな問いかけをも行う、つまり「喧嘩、売ってますよね~」と笑って語ってくれました。

近い将来、成功の比率が上がってゆけば、今の価格でも十分、家族6人が食べてゆける。

作品にこだわり、生き方にこだわり、何もかもに筋を通す小嶋さん。
そういった一つ一つを、にこにこしながらお話しくださいました。

Photo Toru Kometani

小嶋さんは、今回の展覧会のテーマは「壺展」である、と。生活陶芸の専門店では、大きな壺はそれほど売れないが、大きなスペースでスケールを合わせて制作するとなると、こうなった、とのこと。

本展の為に、9月から10回の窯焚きを行い、約3,000点制作されたそうですが、うち、約3割の1126点が展示されました。

Photo IKKI OGATA
満員のお客様が、小嶋さんのお話にじっと耳を傾けます。

最後の質疑応答では、「お金でなんでもかんでも解決するのではなく、自分の労働と価値、たとえば安全な農作物を自分の責任で造る、その対価として自分自身が労働していく。そういう生き方を大事にしているし、作陶のような自分の好きなことをやるからには、百姓的な労働が贖罪として懺悔とも考えている。」

と、心からほとばしる言葉を語ってくださいました。

来春、カイカイキキから小嶋さんの一年の暮らしと、その作品達を綴った書籍を出版します。
こちらも、是非お楽しみに。