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アンセルム・ライラ「INTO THE VOID」展に寄せて Vol.3

ちょっと脱線しますが、こういう人間の欲と美と嫉妬等が渦巻く、現代美術のマーケットのことを、<荒稼ぎしやがって、楽に儲けやがって>と表層だけを見てしたり顔で批評する輩を、特に日本で散見するが、本当に何も知らないのに恥ずかしくもなくよく言うぜ、と思って観てます。ツィッターの バッシング屋、漫画の世界で知りもしないアートの世界を覗いたふりの人。「村上はアメリカでは本当は評価なんかされていない。しかも嘘を流布する とんでもないやつだ」と、それこそが嘘を流布して日本人のニーズに答えるコメンテーター。ARTマーケットはおっしゃるように薄汚く、欲に絡まれているかもしれないが、そうして出来上がった過去の作品をありがたがるのも、また、僕を批判する連中の特徴でもあり、幼稚な権威主義をひけらかしていることに気がついてほしい。

、、、さておき。。。
アンセルムとあの時代、そして今、まだ尚、なぜ彼の展覧会を行うのか、を続けましょう。

アンセルムに問いかけた事。
<「隆は、私の作品をいくつか所有してくれており、それは私の作品をとても評価しているからだと話してくれました。しかし、残念なことに、私の作品が何であるのかをわかっていない、できるならば、それを説明してくれないか~」>

いやいやいやいや、アンセルムさん。本当にわかっていないことなんかないんですよ。僕は直感の部分ではわかっていた。アプロプリエーション。。。資本主義との対峙の姿勢。。。労働からの開放の手続きとアートヒストリーのコンバイン。。。でも、そういう言葉をもしアンセルムが言い始めたら、僕はどうしようかとも思ったんだよ。ひっかけクイズだったんです。けれども、彼は真摯に考え始め口ごもってくれた。それでいい。それがいいと思った。

言ってみれば直感で、その現場にいる状況を認識して対応し続けて生き残り続けることが、実はアーティストの一番大事なことだと思ってきたから。だから戸惑いのアンセルムのリアクションは彼を深く信じる助けとなった。

蜃気楼のようなモノを追う心。「虚無の具現化の可能性」の徒労。

これらが僕らのテーマだよね。だから、その徒労に人間の本質がある。人間の心の本質がある、と思うのです。

それは宗教発生への動機とも似ていると思う。

「芸術の真実」とは何か、という探索が僕ら芸術家の仕事の本懐だ。そういう事を毎回制作する作品で実験し続ける姿勢。恐れずに前のめりで突貫する姿勢に勇気をもらえる。

今回、カイカイキキギャラリーでやってもらう作品全てが、日本での展示に合わせて制作した新作群だ。

虚無、不信、残骸、そしてそれらをまとめる不屈の心。
虚無を束ねてまとめきる彼のスケールを日本の若いアーティスト志望者達に感じてほしいと思っている。
故に会期をGEISAIの開催とがっちり重ねたし、アンセルムを審査員として招聘した。

是非アンセルムライラの新作展を見に来てほしい。
そして混沌とした心の在り方を虚無の力でまとめ上げる力技をその目で見てくれ。
http://gallery-kaikaikiki.com/category/artists/a_reyle/

アンセルムはこの来日で3つの行事を行います。
1. 個展。
2. キュレーション展。
3. GEISAIの審査員。

2番めのキュレーション展、SPECTRA VISION Curated by Anselm Reyle このキュレーション展は今年の4月からベルリンのHidari Zingaroで行われた展覧会のツアー展です。
http://jp.hidarizingaroberlin.de/category/spectra-vision/

若いドイツのアーティスト5人が来日中。昨夜も中野で飲み倒しました。アンセルムのキュレーション展は中野ブロードウェイの Zingaroの3店舗、Hidari 、Kaikai 、Ozで開催します。

アンセルムのオープニングレセプションは9月21日午後6時から元麻布のカイカイキキギャラリーにて。だれでも参加可能です。生意気な美大生諸君にも来てほしいね。そしてその次の日。GEISAI#19の審査員として、 アンセルムにも入ってもらっています。
で、コレを機に中野ブロードウェイ内にBarもオープンします。
今、カフェ業界を震撼させているニューウェーブ、FUGLENにプロデュースしてもらっています。いろんなことが山盛り、全てアンセルムのイベント開催を軸にこの1年、考えてきました。僕の心のスターアーティストの一人、アンセルム・ライラの東京での一週間に是非是非皆さん期待してくださいね。

では、アンセルムの新作展。
期待してください!

村上隆

注)このメッセージは日本語によって、ツィッター上に書いた原稿をまとめ直したものです。