『赤く塗れ!』それが自由へのサインだ!
「ゼロ戦は赤く塗れ」by かいようどう(現 海洋堂ミュージアム館長 宮脇修)
という標語を、今、改めて想う。
「風立ちぬ」は様々な 話題を振りまき、大ヒット快進撃中だが、その中で登場する<零戦=れいせん>の在り方に対しても、マニアからの様々な文句が飛び交っている。
特に機体のカラーリングに対してだが、あんな色はありえない、という批判に対して、宮崎駿監督自身から、折り込み済みであることが先に 出版された対談集に書かれていて、表現に対する自由の表明の意思が力強い。<半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫)>
実在の人物、堀越二郎をしても、脚色改変を大胆に行い一部批判を浴びている。史実を曲解するとは何事か?というのが、批判する側の論理。
そうした批判に対して、30年ほど前に答えを出していた輩が居た。それが海洋堂の創始者の宮脇修氏であった。海洋堂は今でこそフィギュア製作のメーカーとしてその名を馳せているが、かつては町中のプラモデル販売店であった。それが宮脇修氏の発想力と反骨精神とバイタリティを持ってプラモデルをアートプラと勝手に命名し、日本一の売上を誇るプラモデル販売店舗に仕立て上げた。
プラモデルとはいえ、組み上げる時に自由は発想力をもって組み上げれば、それはレールが敷かれたモデルではなくなり、アートとして、表現としてひとり歩きするのだ、と1972年刊行の海洋堂のPR誌、「ホビーへの誘い」に書かれている。
かつ、2009年の宮脇修氏のブログにも別の形で書かれている。
http://www.kisotengai.jp/blog.php?ID=122
かつて、この宮脇修氏は外国から輸入した帆船のプラモデルを組み立て、それ相応に彩色し1つ30万円を超える価格で、50年前に不動産バブルで潤っていた建築業者のオフィスのインテリアとしてバリバリ売り込んでいたというから驚きだ。つまり、今、目の前にあるものは、レールの敷かれた既存のものだが、それを発想力で改変してゆけば、表現として立派に成立し、付加価値が産まれもする、という教訓なのだ。
なぜ、突然このことに言及し始めたかというと、 先に紹介した宮崎駿氏の最新対談集を読んで、そこから宮脇修氏の「赤く塗れ」を思い出し、 拙作の最近のブームに思考が及んだからである。
フラワーボールREDという作品がある。この作品は、U2のボノがイニシアチブをとっていた(RED)プロジェクトの一環のオークションで描いた作品なのだが、
Red Flower Ball (3-D), 2013
http://arthistory.about.com/b/2008/02/06/the-red-auction-at-sothebys.htm
http://blog.livedoor.jp/tribeca1/archives/585125.html
そのオークションで大好評を博し(販売金額は全額寄付)そして版画にポスターにと拡散させていった。REDのお花の図。赤い作品。
http://hidari-zingaro.jp/2013/08/0817_newposter/
まぁ、作家というのはひょんなきっかけで作品制作の動機を得て、妄想に突貫してゆくわけだが、自分の評判の良かった作品をもう一回作りなおしてみようかという、きっかけを「風立ちぬ」の評判を読んで、連想ゲームで海洋堂創立者の標語に行きつき、そして「やるべ」となった。
しかし、ここからがお立ちあい。赤い作品を創るだけじゃ面白くもなんともない。次のような仕掛けで作品をこの世に問うてはどうかと思った。
1,<フラワーボールRED>シリーズは評判がいい。
2,ポスター等つくるとよく売れる。
3,だが、、、宮脇修氏のいうところの「赤く塗れ」はその字のごとく赤く塗りゃあいいってもんじゃない。つまり表現の自由を心のなかに生み出せ、がメッセージ。
4,であるなら、<フラワーボールRED>シリーズではあるのだが、そのプラモデル的な状態で販売するのはどうか?が僕からの新提案。つまり販売時には作品完成図はお見せせず「<フラワーボールRED>シリーズ」であることをのみ担保させるという試み。
5,つまりユーザーは完成作品を観ずに作品を購入するという、予約販売よりもアンバランスなコンディションでのプレゼンテーション。
6,つまり作品は株券などと同じく、内容を精査することよりも、その将来の投機性だけに特化して評価されてしまうということ。
Red Flower Ball (3-D), 2013
まとめ:海洋堂、宮脇修氏の「赤く塗れ」に端を発して拙作の赤い作品を、表現の自由度の幅を広げるべく、コンセプトを援用して作品制作販売に踏み切ります、というプロジェクト。ARTシーンでは初めての試みかと思います。
8月31日中野ブロードウェイ3F Hidari Zingaroにて、村上隆の「赤く塗れ」プロジェクト、公開します。
日本の美術評論家筋の方々におきましては(最近は骨董業界のその筋の人にも睨まれているようですし、、、フフフ、、、)またまた批判の対象でしか無い行動に見えるでしょうが、僕としては歴史に残るパフォーマンスとしてリリースする自信があります。
是非、あなたもこの歴史に参加、刮目して生き証人の一人になってほしいです。
8月31日中野ブロードウェイ3F Hidari Zingaroにて、村上隆の「赤く塗れ」プロジェクト、ご期待ください!!!
http://hidari-zingaro.jp/2013/08/zingaro_info0823/
という、準備に追われておりました故、本日の販売は来週に延期となりました。
期待してくださった方々、申し訳ありませんでした。
村上隆