僕らのゴールは、圧倒的個性のような、オリジナルと言える作品を展開していくこと
─ NaBaBa

一次創作と二次創作の違い

NaBaBa:カオス*ラウンジ以降どうするべきかについては、僕は洋ゲーのMOD文化(*7)に当てはめて考えているんです。彼らの《つかさをつくろう!》は『らき☆すた』(マルチメディア化しヒットした、おたくの女子高生が主人公の美水かがみによる4コママンガ)を借用してつくっていて非常にMOD的ですが、それを経た上でのゴールは自分たちのオリジナルであるべきだと思っているんです。借用した作品づくりではなく、そういった文脈を持ちつつ、著作権とか法的な部分で言いがかりができないくらいの圧倒的個性のような、自分たちのオリジナルと言える作品を展開していく。

おぐち:入口を設定して入りやすくしたけれど、その後は自分たちで答えを見つけていかなきゃならない、と。

NaBaBa:そう。だからかつてカオス*ラウンジに期待していた部分を自分が実現できればと思っているんです。自分自身、「アニメやゲームからイメージを引っ張って転写している。君のオリジナルの世界観ではないよね」と、いろいろな人からことあるごとに言われていて、コンプレックスなんですよ。だから、おたく的な事象やメディアを連想させるイメージでありながらも、自分のオリジナルであると言えるものをつくっていきたいという意識は強くあります。

JNTHED:理解できないものへのコンプレックスに対し逆ギレして生まれる、自己批判的サービス心、みたいなのはわかるな。

STAG:僕はものを売る人間で美術的な文脈の外から来たからあまり語れることが多くないですが、傍から見ていると、個として成り立つ前のムーブメントをつくる過程をずっと回そうとしていたのがカオス*ラウンジで、「あのままだとああいう結果にはなるわな」と見えていた感じです。いろいろな人がホワイトキューブで作品を展示できる取っ掛かりをつくってくれたことはすごくいいと思います。ただ、あれだけの人数が参加しているにもかかわらず、それぞれの作家としてはせいぜい藤城さんや梅ラボさんしか語れない。二次創作も同じところがあって、初音ミクを描いても一番に表立ってくるのは初音ミクというキャラクターであって、その次に作家がいるわけです。

NaBaBa:簡単に言うと一次創作と二次創作の違いですか。二次創作物として初音ミクの絵を描くということは初音ミクの価値を上げこそすれど、自分自身の独立した作家としての価値も上がるかと言えば微妙なところ。俯瞰して見たとき、結局初音ミクという事象の一コマとして埋没してしまうのではないか。だからこそ、僕は一次創作にならなければいけないと思っている。

Mr.:例えば『けいおん!』(女子高の軽音部が舞台のかきふらいの4コママンガ)をモチーフに作品をつくるとする。そのまま『けいおん!』 の図像をカラーコピーして少し細工をして、壁に貼る、は僕の流儀じゃない。拙いかもしれないけれども自分なりに『けいおん!』という素材に躙り寄っていく。自分なり、なのでユーザー的な見方、感じ方とは違うし、そこが批判されるかもしれないが、しかし一次創作にしていくなら、そのプロセスを経なければ抽出できない。抽出されると、次のモチーフへ移っていくときにオリジナリティーとなっていける。