山田隆太郎 陶展

2020年1月24日ー2020年2月6日
開廊時間 :11:00〜19:00
閉廊日:日曜・月曜・祝日
レセプション:2020年1月24日(金)18:00〜20:00

「山田隆太郎展に寄せて」

山田さんの陶芸作品との出会いは、「うつわノート」での個展時でした。

その作風には、僕が陶芸にはまった、15年ぐらい前の2000年代初頭の青木亮さんがまだ存命中だった頃の雰囲気があって、とても懐かしい感じが第一印象でした。そして、青木さんが今も生きていたら、このような更新の仕方をしていくのではないかという、その流れがキッチリと見えて、観賞して、使ってみて、僕が満足度の高い作品を造る作家さんに出会ったぞ!と思いました。とても将来を期待出来たので、すぐに「うちで個展をやってほしい」というプロポーズをさせてもらいました (松本武明さん、御紹介ありがとうございました)。

印象的なのは、山田さんご自身による今展の紹介文でも書かれていましたが、頭部全体の体毛が、ある日ある時発症した御病気で無くなってしまって、その風貌が一種独特の暗黒舞踏のような出で立ちの方に見えたので、何かこう、押しが強く、迫力だらけな外見で、こりゃスゴイ若者が出て来たぞ!と身構えてしまいましたが、山田さんとお話しすると、アニメオタクで、シャイで優しさを秘めた人でした。

で、山田さんは一躍、現代陶芸界のスターダムにのし上がるだろうな、と思いきや、陶芸業界のムード、時代は意外と、15年前の「ふだんづかいのうつわ」的な文脈から逸脱移行していって、もっとライトな感覚、プロダクトと手作りとの間、というよりは、更にプロダクトの方に寄せた形の作風や、なーんちゃってARTみたいなムードが主流になっていき、山田さんの方向性はマイノリティとなってしまった感じでした。

しかし、僕が陶芸に求めているものは「昭和陶芸」の頃の王道、茶陶の歴史の文脈のその先って何なのよ!?というテーマなので、プロダクト的なものやARTもどきな方向性というのは、今ひとつ乗り切れないので山田さんの方向性こそ王道だよ!と思って来ました。
そもそも僕が2000年代初頭の生活工芸の陶芸にハマった理由は、魯山人と柳宗悦がバチバチ闘っていた頃の陶芸の世界観が、デパートなどの投機対象を煽るような価格帯ではなく、普通の人も手に入れられるような価格で、何故か突然変異的に勃興しているようなところが良かったわけで、普段使いとかどーでも良いわけです。
故に山田さんの方向性の方が僕的には、ド真ん中なストライクなのです。

今回の個展用の準備佳境であった、2019年の秋に襲った幾つかの台風で、山田さんの工房の近隣が土砂崩れになり、行方不明の方が出たり、ご自分のお家の前の崖も突然崩れて裏の竹藪や大木などががごっそり無くなってしまったり、大自然の猛威真っ只中にさらされて、生きていくだけの活動も翻弄されている形になってしまい、山田さん御自身が作陶するとは何を意味するのか?等、根源的な問いかけをなされたと思います。

僕が求めていた陶芸の世界とは、2000年代初頭において、エコロジー、自然回帰、田舎に帰るであるとか、脱都市文化というか、日本的ヒッピーな文脈を持ちつつも、何故か創造性だけは、先鋭化していくという不思議な現象を体現している作家さん達に向かっていたので、ある種、追い詰められたような環境における山田さんの作品は、ますます切れ味が鋭くなって、非常にキラキラと輝いたモノが作出されて来ていて、嬉しい気持ちがありつつも、いろいろな不幸に同情しつつ、芸術精製の不思議さを感じています。

しかし、この作品たちが、今の日本の陶芸ファンの心に響くかどうかは、疑問です。
まぁ、響かないからといって、響かせる為の売り文句を作りたいとも思いません。
分かる人がわかればいいし、僕は山田さんのような作家さんをどんどん応援していきたいと思ってるし、歴史にもシッカリ足跡を残せる作品をつくっていると思ってます。
とにかく、歴史に残る作品が出来るか否か!?一作家が生涯を賭けて作陶して、ひとつかふたつの名品が出来るのが今までの陶芸の歴史だったと思うので、それを本質的にやっていけたらいいんじゃないかと僕は思いますが、もちろんご本人はまだ若いですし、トレンドや時代の流れと並走しながらいろんな事を体験したり観たり聞いたりしたいと思うので、ご本人との思いと僕の思いは、ズレまくっているかもしれません。
でも、今回の展覧会のタイミングにおいては、ピッタリと息が合ったかたちで作品達に結実していると思いますので、そういった流れを是非とも陶芸好きを自認する、うるさ型の方達に、お立ち会い頂きたいと思います。

村上隆

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