哀れみの来襲
-coup d’pietà

マシュー・モナハン

2012年11月16日 – 2012年12月22日

EVENT

2012年11月16日(金)

18:00〜 オープニング・レセプション
19:00〜 アーティスト・トーク(ナビゲーター:村上隆)

村上隆からのメッセージ

僕がマシュー・モナハンさんの作品と出会ったのは「©MURAKAMI」展をロサンゼルス現代美術館で開催した時で、LAMOCA本館でプロジェクト的な個展を行っておられました。

僕はそれを拝見して、すぐにMOCAのキュレーターに紹介してもらって、スタジオビジットをさせて頂きました。

展覧会、本当に感動した。

彫刻の美術史の今、最先端、未来、、、を体現されている作品だ!と、もう興奮が足元から脳天にまでビビビと電撃のように立ち上って来た。

マシューは、一言で言って彫刻の脱構築を行っている作家。
彫刻の歴史の中の、人体、神話、立体と平面の境界線、というものをことごとく脱構築させ、それを実体化させている奇跡の芸術家なのです。

例えば、発泡スチロールの四方をガラスで囲い、それをナイロン製のベルトで締め上げ、その躯体の上に発泡スチロールを溶かしたモノとドゥローイングした折り紙とを合体させて、彫像を構成する。これは、見かけは堂々とした彫刻だが、その実態は弱々しい素材を、最低限補強すると言った手さばき。

例えば、他の代表的な作品に、紙を直感的に折り紙をして行き、その折り紙を型取りして、ブロンズに置き換えて行くと言う作品がある。これは、一見、折り紙なのに、その実態はブロンズと言う重厚な物体。どちらも、彫刻然としたルックで「台座と彫像」「壁にかかるレリーフ」といった形式的なものにこだわっていたように見えます。

今回は、そうした「印象の真逆の衝突」という構成の方向性から推移し、今一度「壊れてしまう素材」石膏での造形を基盤に置き、金属との融合、、、つまりは、融合出来ないのですが、、、そこをテーマの一つに選んでいます。

そして、ルックも真新しい。
新作群は、動き出しそうな形態を前面に押し出しています。
ロダン的な要素。
彫刻のムーブメントに着目している。

しかし、壊れそうな素材のアンバランスは、そのムーブメントそのものを脱構築し、ロダン的なマッチョイズムの真逆の脆弱さを謳っているのです。本当にいつも見た事も聞いた事も無い、彫刻のフロンティアを求めるマシュー。

マシュー・モナハンさんはアメリカ人の彫刻家です。
現在40歳。

NYのクーパーユニオンで学んだ後、オランダに渡り、制作の場をロサンゼルスに移してその才能を開花させる。彼に話を聞くと、LAという場が持つリラックスした自由な空気が重要だとの事。現代彫刻界の特異点的な作家です。

1999年にはCCA北九州でアーチストレジデンスをして、奥様であるララ・シュニツガーさんと1年間北九州に住んだ経験もあり、非常に親日家です。そういった意味で、フラットネスなものから3ディメンショナルな彫刻の立ち上がる瞬間が、彼の日本的な部分も反映しているのは、当然なのかもしれません。

カイカイキキギャラリーがスタートした4年前から、マシュー・モナハン展をやるのは、僕の夢でした。今回やっと夢がかなって、日本の皆さんにご紹介できることになりました。

日本人のフラットネスな感覚に通じる彼の世界を、どうぞ堪能してください。

村上隆

EVENT
2012年11月16日(金)

18:00〜 オープニング・レセプション
19:00〜 アーティスト・トーク(ナビゲーター:村上隆)

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