"I used to be darker
But then I got lighter
And then I got dark again"

フリードリッヒ・クナス

2010年5月15日 – 2010年6月12日

I used to be darker, but then I got lighter, and then I got dark again, 2010
© Friedrich Kunath 2010. All Rights Reserved.

フリードリッヒ・クナス(Friedrich Kunath)は1974年、ドイツのケムニッツに生まれ、ブラウンシュヴァイク美術大学でドイツ芸術界で最も広範な世界を持つ芸術家の一人として有名なヴァルダー・ダーン(Walter Dahn)に師事しました。初の個展を開いた1994年以来、LAで制作活動をしている現在に至るまで、インスタレーション、ドローイング、ペインティング、映像、写真など現代アートにおいて使用されているあらゆる表現手段を用いて作品を作ってきましたが、彼の作品に一貫しているのは、軽快でユーモラスな見た目の奥に、実は深く存在する作家の精神世界です。

人間の根源にある、憧れや憂鬱、孤独、郷愁、つながりへの切望といった感情を主観的に見つめ、その「内省する自己」は、しばしばアイロニックなテキストやタイトルとして作品に表れます。18世紀末に興ったドイツ初期ロマン主義に見られるような深い精神性や、同様に彼の作品に表れる自然への回帰主義が、作家が活動するアメリカの「ポップカルチャー」に落とし込まれ、転用され、融合され、捨象され、再構築され、作品として成立しています。

「シグマール・ポルケのポストモダニズムがリチャード・プリンスの毒されたポップに出会ったような作品」と評される、フリードリッヒ・クナスの日本では初めての個展です。希望にあふれると同時にメランコリック、ユーモラスであると同時に不条理、そのアンビバレントさが見る者に存在の意味を問いかける作品世界は、自由と不自由、その間を引き裂かれて生きる日本人の心にも強く響くに違いありません。フリードリッヒ・クナスのアジアで初めての個展を、是非ご紹介いただきたく、お願い申し上げます。

人生におけるパラドックスをテーマに幸福と悲哀、光と闇、笑いと涙など、相矛盾したものを一つの作品の中に描き出す技術と深い精神世界に村上隆は大きく心を揺さぶられました。
彼の作品に初めて出会った時の事を村上はこう言います。 ”「初めて」彼の作品を見たのは1年ちょっと前だったんだけど、独自の表現に内在するパワフルな メッセージに圧倒されて。で、これ誰の作品?ってすぐに聞いたんだ。” 衝撃の出会い以来、親交を温めてきた二人。そしてついにこのたび、日本の若者に彼の作品を 見せたい一心で、村上隆はこの個展を実現させました。