僕が17歳の時、ジャコメッティの話を美術の先生に聞いて、彫刻に憧れて、僕は今、彫刻を作ってます。
大谷工作室
2016年11月26日 – 2016年12月24日
開廊時間 :11:00 – 19:00
カイカイキキギャラリーは、11月26日(土)~12月24日(土)に、大谷工作室の個展「僕が17歳の時、ジャコメッティの話を美術の先生に聞いて、彫刻に憧れて、僕は今、彫刻を作ってます。」を開催いたします。
作家から展覧会によせて
小さい頃から芸術にあこがれていた僕は高校で美術部に入りました。そこで出会った先生は僕にジャコメッティや古い絵画のことなどいろいろと教えてくれました。すっかり芸術家になりたくなって、とりあえずは美大だと、東京の予備校の夏期講習に行きました。
そこでは「じゃがいもと架空のシーンを構成セヨ」のような課題に、なんでこんなトンチのようなものが芸術と関係があるのかわからなくて、これが今の芸術につながっているならば、そんなのいいや、もっと手や目の訓練のような事がしたいなぁと、沖縄の美大の彫刻科に入りました。そこで、先輩から日本で彫刻だけで食ってる人なんかいないんじゃない?という話をきき、彫刻家になれないなら、大学にいるべきではないんじゃないかと悩んでしまい、一年休学していろいろ見て回ることにしました。
ボロい軽トラの荷台に寝ながら、美術館、博物館、寺社仏閣などを巡る旅をしました。そしてトラックの荷台に張ったビニールシートのなかでかんがえました。自分には美術がわからないけれど、いろいろなものを見ると、そこに何か大事なものがあるのはわかる。そして、そこには何かの神様もいるなぁと思いました。手と目と気持ちがうまくひっついた時にその神様はおりてくるのかもしれないとも思いました。
大谷工作室: 大谷滋
「工作」という屋号の意味を問う
『大谷工作室』さんという屋号の作家さんの展覧会を行います。毎年、なんとなくですが、日本の陶芸家の展覧会を年末に行っていますが、今回はちょっと違うのです。
『大谷工作室』というその名の通り、彼は<工作>をする作家なのです。陶芸もやってますが、本職は「工作」屋さん、なのです。 <工作>とは何かというと、子供がモノを作る時の無託なイメージが浮かび上がりますが、同時に、プロとは縁遠い感じもします。
僕が彼と出会ったのは、御茶ノ水のトライギャラリーだったか。 そして他のギャラリーでの活動を追っかけてゆき、4年ほど前から僕らの画廊でも作品を取り扱うようになりました。
彼との話で、出会った当初、印象深かったエピソードは、あの奈良美智さんの陶芸作品を手伝っていた、ということでした。 たしかに、大谷さんの作品には奈良さんの作品に通じるモノがある。西欧芸術の保守本流のテーマとは違った部分における、芸術のテーマ、みたいな。例えて言うなら、ゴーギャンとかアンリ・ルソーとか。芸術の中枢部分の、人がなぜ芸術を造り、それを愛でるのか?という問いかけへの答えのための創造、、、みたいな。
でも、ココ数年の大谷工作室さんは、なんか 陶芸家としての、大谷滋(彼の本名) としての見え方が全面に出てきてて、それでいいの?と何度も問いかけてきました。 今回の展覧会の展示プランを最初に観たときも、明らかに陶芸作品を見てください!的なプレゼンテーションだったので、僕は真剣に詰め寄った。
村上:
「大谷くんは、もう、『陶芸家 大谷滋』として活動して『大谷工作室』の屋号をやめたら?」
「タモリが売れてきて、真面目な仕事もしたいとおもって、森田名義に戻すみたいで、戻すんならどうぞって感じだけれども、屋号への責任、なんか甘いの俺(村上)嫌なんだよね」
「Mr.も過去そういうことがあって、実名を言いたいとか言ってて、そういう中途半端な覚悟で屋号つけたんかアホ!そんな気持ちで芸術やるのやめろ!って、Mr.には言った」
「しかし『大谷工作室』が『大谷滋』として、陶芸中心で行くのは俺は全然いいよ。しかし、それは陶芸家というジャンルの人間になることだからよくよく考えてね」、、、と。
で、その後、新しいインスタレーションプランとともに、『大谷工作室』の屋号で一生生きます!という話をもってきた。同時に、ぶら下げてきた展示プランはというと、、、確かに陶芸作家の展覧会じゃないみたいで、楽しげな感じなんだけれども、小手先な楽しさ、的な感じで、どうなんだろうね?と投げ返しました。そして以下の様な話をしました。
村上:
「今回の新作で、一番いいのは、奈良美智さんの陶芸作品に似てるやつだよ」
「奈良さんだって、大谷くんや陶芸の森で手伝ってくれてる作家さんの生き血をすすって陶芸作品造ってたんだろうし、大谷くんのが奈良さんに似てるからって、安易な真似であるとはいえないから、大丈夫だから、客観的に『良い』方向に持ってったほうがいいよ」
そう言うと、大谷くん
大谷:
「屋号の件で、色々考えた時に、自分にとっていちばん大事なのって何やろって思ったんだけれども、高校の彫刻の先生に言われたこと、あそこ大事やなぁ~って、考えながら造ったのが、奈良さんの作品に似てると言われてる作品でした」
「似てるかもしれないけれども、そういう自分の屋号の『工作室』とか、原初的な欲求と言うか、そういう事もう一回考えてみないとあかんなと。そういう気持ちで造ってたら自然とああなってしまった。陶芸や無くて、彫刻、みたいな、、、。。。」
と言ってきました。
それは良いと思うなぁ~、、、と。
それで、個展のタイトルは
「僕が17歳の時、ジャコメッティの話を美術の先生に聞いて、彫刻に憧れて、僕は今、彫刻を作ってます」
と、なりました。
陶芸と彫刻と工作の境界線。外から見たら曖昧であまちゃんかもしれないが、その立場に立ち続けるのには、それ相応の覚悟が必要な、そんな決意がみえる個展になるはずです。
お楽しみに、、、って、僕も楽しみにしています。
店主・村上隆