当真裕爾やちむん展

当真裕爾

2024年10月4日(金)- 2024年10月16日(水)
開廊時間:11:00〜19:00
閉廊日:月曜日・火曜日

    ※展覧会は終了しました。
    沢山のご来場、誠にありがとうございました。

©︎Yuji Toma

カイカイキキギャラリーでは、2024年10月4日より、当真裕爾新作陶芸展「当真裕爾やちむん展」を開催いたします。

当真裕爾さんの工房は、沖縄の那覇空港から車で約50分北上した 古謝(こじゃ)という地域にあります。工房への道中には、宜野湾の広 大な米軍基地や沖縄の伝統的な亀甲墓が広がり、どんどんと進んでいった先の山の麓の路傍に突然工房が現れます。全部で20坪ほど の小さな工房で、入り口から足元には土や煉瓦や薪が転がり、その 先に当真さんが独学で作り上げた2種類の薪窯があります。窯焚きの 時には周囲一帯を汗が吹き出すような蒸し暑さにしながら、作品が焼成されています。

これまで当真さんは、カイカイキキギャラリーでのグループ展「土友の墓場」展、「東京の土」土友展、「國吉清尚オマージュ展」などで、主に湯呑みやカラカラ、中サイズのつぼなどを中心に発表してきました。
今回の個展では、カイカイキキギャラリーの空間に合わせて、大作に挑戦しています。展覧会直前まで焼成するとのこと。グループ展でも当真さんの作品目当てのお客様が並ぶなど、スッカリ人気作家となった当真裕爾さんの渾身の作品群をその目に焼きつけて下さい。


沖縄市古謝の当真さんの工房(2024年8月撮影)
©︎Yuji Toma


作家からのメッセージ

僕は、沖縄で焼き物を焼いています。
焼き物は沖縄の方言で「やちむん」と言います。
18才の頃にシーサー職人の叔父の工房で土揉みや型押しのアルバイトから始めて、シーサー作りがとても楽しくなりました。
氷が水になる様に、焼くと灰が溶け、その変化がとても面白くやちむんに夢中になりました。
薪で焼いてみたくなり、穴窯を作りました。
その頃は、薪で焼きたい気持ち、うまく焼ける想像だけで、土を掘って作り、窯に詰めて、温度の上げる事のできない窯焚きを体力の限界まで焼いていました。
初めて温度が上がり湯飲みが溶けて潰れているのを見て、とても興奮しました。
本当に嬉しかったです。
面白いやちむんを焼きたいです。
今回の展示会を
「当真裕爾やちむん展」とします。
よろしくお願いします。

当真裕爾


ギャラリーオーナー・村上隆からのコメント

陶芸ファンの皆さんにおいては、待ちに待たれたであろう、カイカイキキギャラリーにて当真裕爾さんのフルスケールの個展の開催です。

2020年10月18日にtonotoでの個展を終え、そのあとカイカイキキの個展のために、全てを振り切って制作に没入してきた沖縄のやちむん(沖縄では陶芸のことを「やちむん」と言う)作家です。
この作家との出会いは色々なところでも書きましたが、パンデミックに入った2021年春、京都の陶芸店tonotoに行って、オーナーの武さんが僕がお目当ての作家とは全く別に、当真さんの作品を小部屋で対峙させてくれたところから始まります。
私はその作品がただの汚い黒い塊に見えて、なんでこんなの紹介するのかなと思っていると、自分の一押しの作家です、ということなので、個展いつやったんですかと聞くと、つい先日…みたいなことを言って、全然売れている感じではなく、「ああ売れなかったんですね」と聞くと、武さんは「はい」と言ったので、ちょうどパンデミックにも入った直後だったので、経営的にも苦しいのかなと思い、かなりの数を購入して帰りました。
で、その購入しては見たものの、そのまんま送ってもらっても封も開けずに、数ヶ月間そのことも忘れていました。ある日、陶芸を管理しているカイカイキキのスタッフが、この梱包開けていいですかっていうことで当真さんの梱包を開けて、その作品達を1つ1つ見て、うーんなんじゃこりゃあ…黒い!焦げてる!重い!!…と、改めて「好きじゃないなぁ」と思ったのです。まあちょっとじゃあこれで煎茶でも飲んでみようかということで、3つ4つ自分の部屋に持って帰って、茶を入れて飲んでみたところ、「なぬ!?」ものすごくエロティックな体験というか、唇と舌が当たった時に、何か今まで感じたことのないエロスを感じたので、直ぐに武さんに電話して、「この作家素晴らしいですね」と言ったところ、陶芸家の清水志郎さんが紹介してくれた作家さんです、ということでへーっと、清水さんへと関心が移っちゃったんだけど、なんで清水さんが当真さんを知ったのかなということを、その時は僕はよくわからなかったのですが、後に「土友」の創始者である和田直樹さんが解説してくれたのは、まずは和田さん本人が沖縄に國吉清尚の足跡を訪ねて旅した時に、骨董街で國吉清尚の再来だ、と思って当真さんを発見した時から始まったそうです。そして和田さんより清水さんに伝わって、で、tonotoの武さん、私と繋がってきたのです。(ここから先に色々なストーリーはありますが、このエッセイでは割愛します)
2024年8月24日-25日に和田直樹さん、当真裕爾さんらで國吉清尚へのオマージュ展もやってみました。
つまり、お土産物としてのやちむんではなくて、沖縄の陶芸=やちむんとは何なのかということを探りたくて、その國吉清尚もやりました。

生活工芸の文脈で私は陶芸を好きになったわけですが、生活工芸を「工芸青花」の菅野康晴さんとパンデミックの最中に日本中回って、それでイベントもやり、生活工芸の中核である人々との対話なども行いましたが、どうしてもその根源というのがわからずに、ふわふわした感じでした。最近、私のフィールドワークで、全く違う文脈から、その本当の起点を見つけ出すことに成功しました。
それは、1960年代70年代の学生運動・全学連から全共闘という流れの中での、日本のインテリの連中の運動が、生活工芸の原点であるのです!要するに敗戦後、日本が自治独立しなければいけない安保闘争であるとか、そういったものとの関係性の中において、現在のYouTubeが突然YouTuberというものを生み出し、世の中にクローズアップされたのと同じように、学生運動のインテリの集まりの中から芸術的な集団として演劇の一族が出てきて、それが例えば演劇集団「民藝」であるとか、「黒の会」であるとか、「天井桟敷」や「唐組」など、そういうことに散らばっていき、演劇の活動家の方たちが、大量に出現した、と。
ある時、その生活工芸の話を三谷龍二さんから聞いたエピソードにこういうのがありました。
「自分は演劇をやっていたが挫折をして、長野県の方で高速道路の工事をしていたので、仕事を巡って長野へ辿り着き、それでペンションで売るようなお土産物を作るところから自分の工芸の歴史が始まった」と。その時は、へ〜っていう感じで、その時代性だけを追っていたのですが、すごく大事なのは、三谷龍二さんが演劇畑の出身であった、そこから挫折して工芸に行ったというところなんです。で、じゃあその演劇のその先、そのもっと始祖はなんだったかというと、学生運動だったと。つまり、そういった時代の日本。若者たちが激動の時代に突入したときのその運動体みたいなものが陶芸やら工芸やらにも流入していたというところが肝です。(これは本当に、私のフィールドワークによって発見したことなので、他の工芸系の評論家達は、「村上さん曰く」と注釈を付けて欲しいです。工芸系の人々は、作家も評論家も断りなく、すぐにコピーするので、その辺のモラルどーなってるの?といつも思ってます)で、沖縄の陶芸家 國吉清尚も、ある種そう言った日本全国におけるムーブメントにも多大な影響を与えられてしまって、特に國吉清尚はウルトラマンの脚本家である金城哲夫や上原正三、その金城さんが手伝った海洋博に連携し、日本と沖縄の関係性、もしくはそういったアイデンティティの発見、喪失というところと陶芸を合体させたというのが白眉というところがあって、それにやられた和田さんが沖縄に國吉清尚の足跡を辿ったと。そういったところで当真さんに行き着いたという、非常にまわりくどい話なんですけれども、僕も当真さんがなんでこんなに面白いのかなっていうのをわからなかったのですが、学生運動の頃からの、若者たちのドロドロした日本のなんとも言えない、行き場のないようなルサンチマンやら反抗心やら、そして沖縄の地で熟成したという文脈が面白いところなのです。

それはさておき、当真さんは一言で言うと、とても下手くそな陶芸家だと思います。今でこそ水漏れも無くなってきて、それなりに作ろうとも形状は保てていますが、色であるとか完成系の方向性というのは、小さなぐい呑みや湯呑みでは達成できますが、大きい作品ではまだまだです。その意味で発展途上の作家です。僕はその彼に大きな可能性を見出し、彼に賭けたいなと思っています。長くなりましたけれども、どうか皆さん、陶芸ファンの皆さん、刮目して展覧会に見に来て下さい。

今回の展覧会は、カイカイキキのご贔屓の方達を事前に入れるようなプレビュー制度になっておりますので、オープニングに並ばれて一番良いものがとれるというわけでもないのが、他の陶芸業界と違うところで申し訳ないのですが、その辺もご憂慮いただいて展覧会に来てみて下さい。

村上隆
カイカイキキギャラリー店主


当真裕爾(とうま ゆうじ)

1986年沖縄県具志川市(現在うるま市)生まれ。
高校3年生から陶芸家・シーサー造り名人の叔父の手伝いを初め、造形の技術を学ぶ。2008年に第60回沖展で浦添市長賞を受賞、2017年には動きと迫力のある陶芸作品「風神雷神」で第69回沖展沖展賞を受賞。
近年の展示に、「國吉清尚オマージュ展」(カイカイキキギャラリー, 2024年)、「東京の土」土友展(カイカイキキギャラリー、2024年)、「土友の墓場」展 (カイカイキキギャラリー, 2023年)、「当真裕爾”染付” 」 (トノト,、2023年) 、「土根性焼 和田直樹&当真裕爾」(ギャラリーラファイエット、2021年)、「当真裕爾”灰汁” 」(トノト、2020年)など。

カイカイキキギャラリー「東京の土」土友展にて
Photo: reiko mitake ©︎Yuji Toma


開催概要

作家名: 当真裕爾
展覧会名:「当真裕爾やちむん展」
日程:2024年10月4日(金) – 2024年10月16日(水)
開廊時間:11:00〜19:00
閉廊:月曜日・火曜日
場所:カイカイキキギャラリー
〒106-0046
東京都港区元麻布2丁目3-30
元麻布クレストビル 地下1階


展示予定の新作

©︎Yuji Toma 

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