中村一美個展

2014年9月5日 – 2014年10月2日
レセプション:2014年9月5日(金)18:00〜20:00

村上隆からのメッセージ

80年代に本格的な絵画制作を開始した中村一美は、多くの同世代の作家同様、戦後アメリカの抽象表現主義の圧倒的な影響下から出発しました。

マーク・ロスコバーネット・ニューマンらの抽象絵画を研究する一方で、それらの単なる模造に堕することなく、日本的なる独創性と普遍性を兼ね備えた作品を模索したのです。そして、中国宋代の山水画、朝鮮の民画など、東アジアの伝統的な絵画における空間表現や、形象の記号的・象徴的作用に着目しました。

その端的な例として、日本の平面的な日本画家、福田平八郎のデザイン的な文様と写生の間の表現を、西欧モダニズムの絵画・絵画理論によって再解釈させるというアクロバットを達成させようと、簡素なモチーフを抽出し、厳密な構成に基づいて反復することで、絵画平面を支配しようという実践を続けています。

中村は抽象画家として高名かつ活発な活動を、日本の現代美術を牽引していたセゾン美術館をバックに20年間続けた後、十数年、沈黙に近い形で表舞台から消えました。それは、日本の現代美術界におけるトレンドのみを追いかける業界の問題と無縁ではありません。

しかし、そうした逆風には全く関係なく、沈黙期間にこそ多くの絵画作品を制作し続けてきました。2014年の春、大規模な回顧展が開催され、ようやくその芸術性の再発見の作業が開始されたと言えます。まとまったカタログの出現と共に、中村の芸術の深度、強度が日本を超えて、世界のアートシーンへ、特に抽象画の専門領域へ流布されることでしょう。

今、日本の現代美術界は安易な答えを出すトレンドにまみれています。特に若く高い志を持って美術大学に入学した画家志望の学生さんたちにとっては暗黒の時代とも言えましょう。期待していたであろう、現代美術の難解で高貴な世界を堪能できない!そういう諸兄は、中村一美氏のややこしく分かり辛い絵画理論を体験し、そのフラストレーションを晴らしてください。純粋抽象絵画の歴史の中での特異点である中村一美の絵画制作の制作へのバイタリティ、そして実践、実験への強靭な姿勢を作品から、作家から感じて頂き、芸術の未来の可能性にフレッシュな希望を見出して頂きたいと思います。

村上隆

EVENT

トークショー

中村一美 x 吉竹美香(ハーシュホーン美術館彫刻庭園
アシスタント・キュレーター)

日時:2014年9月19日(金)19:00〜20:30
会場:Kaikai Kiki Gallery
入場料:無料
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Zingaro関連企画

トークショー:中村一美 x 村上隆
「偏りすぎた現代美術講座3
中村一美による中村一美論を村上隆が徹底的に聴きこむ会。
ー絵画を死ぬまで描き続けよ!ー」

日時:2014年9月13日(土)18:00〜19:30
会場:Zingaro Space(中野ブロードウェイ2F)
入場料:3000円(ワンドリンク付き)
詳細はこちら

展示「中村一美:社会意味論」

日程:2014年9月13日〜10月2日
会場:Hidari Zingaro(中野ブロードウェイ3F)
詳細はこちら

※個展開催期間中は、Kaikai Zingaroでも展示を行います。
Kaikai Zingaro
東京都中野区中野5-25-15 中野ブロードウェイ2F

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