キャスパー・ソンネ個展「Body Body Head」

Body Body Head

キャスパー・ソンネ

2018年10月26日 – 2018年11月22日
開廊時間 :11:00 – 19:00
閉廊日:日曜・月曜・祝日
レセプション:2018年10月26日(金)18:00〜

10月26日から11月22日にかけて、カイカイキキギャラリーではキャスパー・ソンネの日本初となる個展「Body Body Head」を開催いたします。

ソンネは、「process-based abstraction(プロセスに基礎を置く抽象主義)」を通じて矛盾と対立をシンプルかつ優美に掘り下げていく手法により、ここ数年で世界中から注目を集めるようになっている作家です。 Process-based abstractionとは、作品のビジュアルだけでなく、それらを制作する方法や手段からも意味が誘起されるという概念です。 ソンネは絵の具(塗料)やキャンバスといった、通常の制作で用いられる実体を持った素材に加え、火や化学薬品がもたらす効果など、時間の経過によってもたらされる何らかの変化をプロセスとして作品に取り入れ、静的な画を歴史が何層にも重ねられた動的な作品へと変身させます。

本展「Body Body Head」では、自己を肉体と精神という2つの要素に分けるアプローチが採用されています。 デジタル化時代の中で、我々の心と身体は繋がりを失っていく一方です。 ソンネは、SNS世代である現代人が不安に突き動かされるように幸せを追い求めていくなかで、アイデンティティがばらばらに分解されていく有り様を捉え、それについて考えを巡らせています。

本展では、ソンネの「HP」シリーズから新作5点をご紹介します。 「HP」とは「Holistic Paintings(全体論的ペインティング)」の略で、作家の過去と現在、未来に由来する要素を自由に組み合わせ、人格というものは単一で動くことのない存在であるという、一般に受け入れられている概念に意義を差し挟もうとする作品群のことです。 10代ではグラフィティ・アーティストとして活動し、その後ファッションの学校に通ったソンネの過去は、キャンバスに無造作にかけられ、上からスプレー・ペイントで汚されたファブリックに象徴されています。 そしてそれらの異なるメディウムの間にぼってりと滴り落ちているのは液状ゴムで、制作を進めるうちに思いついて意図せず付け加えられることになったその要素は、過去の様相を否応なしに変えていく、現在というものが持つ予測不可能な性質を表しています。

ここに積み重ねられている作家の個人的な歴史の層は、作家自身の進化のみならず、人は皆、時間の経過とともに混沌として矛盾に満ちた進化を遂げていくものである、という考え方を表しています。 この考え方は、現代を生きる我々が、入念にキュレートされた1次元的なオンライン上のペルソナを作り上げることに執着する姿に、直接的な異議を唱えています。 ペインティングたちは人間と同じように、完全に固定された存在ではなく、未来に向けた変化の余地を残しています。 ペインティングからペインティングへと移動する際に通るギャラリーのコンクリートフロアには大きなゴムの水たまりがいくつもにじみ出ていて、鑑賞者の行く手を阻みます。 床にできた「黒い穴」を考慮せずにその場を自由に行き来することは不可能で、従って鑑賞者は、自らの、またその空間における自らの存在を、強く意識せざるを得なくなります。 ペインティングと並べられた不思議な黒い水たまりたちは、鑑賞者がデジタルの世界から抜け出し、物理的な実体としての自分に向き合うきっかけを与えてくれる存在なのです。

個展タイトルのうち2つの物理的な「肉体(bodies)」にあたるペインティングとインスタレーションと並んで置かれているのはビデオ作品<< Freedom Is >>で、こちらがタイトルの中の「頭(head)」にあたります。 具象的なイメージが一切登場しないこの作品では、全て「Freedom is…」という2つの単語から始まるいくつものフレーズが、エンドレスに続いて表示されます。 見覚えのある文化的なステレオタイプを述べたそれらのフレーズは、ひとつの塊として、シンプルな言葉で我々のこれまでのメディアの捉え方に疑問を呈し、我々にポスト・インターネット社会における「自由」の真の意味について、もういちど考えてみるよう促します。

「Body Body Head」は、ソーシャルメディア時代における自我からの乖離について深く思いを巡らせ、現実世界の困難に背を向けて空虚な想像の世界に逃避する、今を生きる世代を批評しています。 対戦相手の胴体を2回、頭部を1回ヒットする総合格闘技の戦法を由来とする個展のタイトルは、インターネットに掻き立てられた幻想から我々が目覚めるにはもしかすると少なくとも2回、ボディブローを食らって胴体(肉体)が頭(精神)と繋がっていることを思い出させてもらう必要があるかもしれない、とほのめかしています。 カイカイキキギャラリーでは初となるキャスパー・ソンネの個展で、様々な思考のきっかけを与えてくれる作家の最新作が織り成す世界を、ぜひご体験ください。

作家から本展に寄せて

私は長年にわたり、アーティストであるということが何を意味するのか、あれこれ考えてきました。 そして私にとって究極的にそれは、自由を意味しているのだと悟りました。 ありのままの自分でいる自由です。 アーティストであることは、規範的な社会のなかで最大限に自律性を保てる方法なのかもしれません。 文明社会に背を向けて引きこもることなく、普通の人々の予測や期待に縛られずにいられるということです。 積極的に社会に参加しながらも、基本的には自分がやりたいようにやる。 その点からいえば、私のスタジオは私の聖域であり、私が主人でありまた奴隷でもある、自分だけの小さな王国です。 そこで私は、完全な自由を味わうことができるのです。

キャスパー・ソンネ

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